浜下り(はまうい)

4月18日、沖縄では海で3名の方が亡くなられました

たいへん悲しいことですが、沖縄では2007年4月18日に3名の方が海でお亡くなりになりました。テレビやラジオの全国ニュースでも取り上げられたほか、ヤフーのニュースでも取り上げられています。

 沖縄県地方はこの日、沖縄近海の低気圧が非常に発達しながら通過するという非常に風が強い要注意日でした。
非常に強い風と大雨、特に南よりの非常に強い風が、低気圧に伴う前線の通過によって西、北西というように風向が大きく変わる風廻りが起こっています。

 この春先の季節は、大陸から高気圧と低気圧が次々と日本列島に到来します。それに伴い天候もころころ変わります。晴天も3日は続かずに雨をはさむことが多くなります。前線を伴った低気圧の通過に伴い、急激に風向が変わります。沖縄の人たちはこれを風廻り(かじまーい)と呼んでいます。特にこの旧暦2月頃(3月中旬から4月中旬頃)の風向の急変を2月風廻り(ニンガチカジマーイ)と呼んでいて、非常に危険だと考えていました。いままでとても穏やかだった海に急に風が吹き込んできて、見る見るうちに白波が立ってきます。ほんの数分のうちに高波になってしまうこともしばしばあります。ですから海人(ウミンチュ 沖縄の漁師)は、この風廻りをとても警戒していました。

 おりしもここ数日は沖縄でもとても有名な潮干狩りの時期です。旧暦の3月3日(今年は4月19日)は浜下り(はまうい)と呼ばれるいちばん有名な干潮日なのです。いつも忙しく立ち働いている女性たちがこの日ばかりは家事を放り出してでも海へ行って水につかって遊ぶという日です。女性の災厄を払うとか健康祈願のためです。この伝承民話に関しては別に紹介します。

 冬の時期には昼と夜の干潮を比べると夜間の干潮時のほうが潮が引き、潮位が下がります。冬の風物詩はいざり(いじゃい)と呼ばれている電燈を持った夜の潮干狩りです。春先の今くらいの時期からは昼と夜の潮位が逆転して、昼の干潮時に潮位が低くなります。これが浜下りです。旧暦の3月3日前後は大潮の時期にあたり、かなり潮位が下がり、リーフと呼ばれる沖合いのほうまで干上がり、こういうところを歩きながら、貝やタコをとるという昔からの風習なのです。この頃に1年に1度だけ現れることで(本当はそうではありませんが)八重干瀬(ヤビジ)というところが特に有名です。

 今日はうちでは修学旅行の中学生たちのスノーケリングが入っていましたが、天候が悪化するということで中止して、マリンクラフトに切り替えていました。見る見るうちに潮が引いていきます。大雨の影響でうちのほうは川からの赤土の水が流れ込んで状態が悪かったため、人では少なかったです。普段であればかなりたくさんの方がうちの前の海に出ています。それでも崎山という川の向こう側の干潟には続々とたくさんの人たちが出て行くのが見られました。

 干潮で潮がかなり引いていても、風が強くなってくると波が高くなり、今まで干上がっていたところに大量の海水が押し寄せてくることがあります。そうなると浜へ戻るのがとても大変で危険です。干潮の時間を過ぎると潮が満ち始め、潮位が上がってきます。満ちはじめるといっきに海水が上がってきます。沖縄の海にはその場所に応じた海の道があります。これが渡り口(わたいぐち)とか呼ばれるルートで、この道を知らなければ人よりもはやく沖合いに歩いていくことができなければ、潮が満ちてきたときに安全に帰ってくることができないのです。間違ったところを進んでいくと自分の行く手を海水が先回りして、歩けなくなることがあります。孤立してしまうことがとても危険です。特に大潮の時期はたくさん満ちて、たくさん干くというように水の動きが非常に大きいためにとても強い流れが発生します。ですから、リーフ内の浅い瀬が立つような状況でも立っていられなくなるほどの流れが発生することがあり、この流れにつかまり沖合いに流されるという事故も多いです。リーフカレントやリップカレントと呼ばれる沖出しの危険な流れです。
 
これからだんだんと気温も水温も上がり、海で遊ぶ機会が多くなりますが、安全に十分注意しながら活動していかなければならないと強く感じます。みなさんも海での活動には十分用心しましょう。




今回亡くなられた方たちのご冥福をお祈りいたします。



2007年4月18日のレポート

なきじん海辺の自然学校