なきじん海辺の自然学校

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マングローブとは


地球

マングローブとはどんな植物なんだろう?

テレビの旅や自然に関する番組などで紹介されていますが、どんな木のことをそう呼んでいるのか、そして名前の由来などもチェックしたいと思います。カヤック(カヌー)体験ツアーでも、実際に観察しながら紹介しています。


どんな木のことをマングローブと呼ぶの?

マングローブ(mangrove)とは 熱帯や亜熱帯地域の海岸線や河口付近の汽水域で、特に満潮のときは海になり、干潮のときは干上がってしまうようなところ(潮間帯とか感潮帯ともいう)にある植物の総称とされています。言い換えると、海水と淡水が混ざり合うようなところで、水につかったり、干上がったりしても暮らしていけるような植物たちのあだ名です。例えば、高山植物というとただひとつの植物の名前ではなくて、まとまった大きなグループの名前になります。これと一緒で、ひとつの木の名前ではなく、あるグループの名前(総称)です。このようなものをマングローブと呼んでいて、この木が構成している林のことをマングローブ林と呼んでいます。主要なものとしてのヒルギ科のほかにクマツヅラ科やシクンシ科、シダ植物の中があったり、ヤシ科のものなど種類も色々とあります。世界中で100種類近いとも言われているようですし、分類の方法によってはもっと少ないとも書かれている本もあるようです。日本だけでも広く数えると20~30種類あるといわれています。
暮らし方として、あるいくつかの特徴を備えているものを広くよんでいます。大気中に根が出ていたり、胎生種子と呼ばれている種をつけたり、海水に浸っても大丈夫だったりと、そのほかにも各種の要素があって総合的に判断して、この仲間としています。ですからかなり特徴的なものから、ややマングローブっぽいというものまで様々です。これらの判断の仕方によって総数も色々ですが
、一般的には100種類近くといってもよいみたいです。


ヒルギの仲間
写真はメヒルギです。寒さにいちばん強いマングローブです。葉っぱが小さくて、大きさもかわいいです。



ヤシの仲間
写真はニッパヤシです。日本では沖縄の西表島だけに生育しています。


マングローブの特徴

いくらかの条件を満たすものをマングローブと呼んでいます。その判別の基準によって、数もいろいろです。次に紹介するものは、特徴的な要素になります。根や種子などに特徴があります。生育環境とはつまり塩分の影響を受けても大丈夫、つまり塩分耐性があるということになります。これらの要素によって純粋なマングローブから、ややそのような種類に準ずるというようにいろいろに分類されています。


気根や呼吸根を持っていて、根の形状も色々です。大気中に出ている根を気根と呼びます。普通によく知られている植物は地中根です。気根の中でも、大気とのガス交換を行っているものを特に呼吸根と呼んでいます。



板根
板を立てたような形状になることから板根(ばんこん)と呼ばれています。


膝根
地面から出た根が、折れ曲がるような形で再び地中に戻っているみたいで、逆V字のような形状です。ちょうど膝を曲げたような形状をしていることから膝根(しっこん)とか屈曲膝根と呼ばれています。


テレビなどでよく見るマングローブのイメージだと思います。タコ足のような根がたくさん伸びて地面についています。支柱根(しちゅうこん)と呼ばれています。根っこで立っているというよりも、地表に到達した根が地面を強く引っ張ることで、木を支えています。役割的には考えると「ひっぱり根」です。


筍根
地中からまっすぐに伸びて、空気中に出ています。筍(タケノコ)のような形状から筍根(じゅんこん)と呼ばれています。



種子

マングローブの大きな特徴は、胎生種子をつくるということです。広い範囲でマングローブと呼ばれているものは、普通に種子をつくるものもあります。どちらも母樹から落下した後で、海流などによって広範囲に散布されることがあります。



胎生種子
普通の植物は種子(種)ができた後、母樹から落下して発芽(芽を出します)という流れです。しかしヒルギの仲間は、母樹についている状態で果実内に芽を出します。そして一定の状態まで成長した後で種子は落下します。これを実生とか散布体と呼んでいます。特にマングローブの場合は胎生種子という名前で呼ばれることがあります。赤ちゃんがお母さんのおなかの中で、栄養を供給してもらいながらすくすくと育っていくというイメージかもしれません。胎生種子は母樹についた状態で栄養の供給を受けながら、発芽し成長していきます。他の生き物でも使われる用語として、卵生・卵胎生・胎生という生命の誕生の方法があります。

生育環境

熱帯から亜熱帯のエリアで、感潮域と呼ばれている海水の影響を受けている環境で生育することができます。海岸線や湾、入り江、そして河口域などで海水と淡水が混ざり合っている汽水と呼ばれているようなところです。



内海
内海や内湾のなかで波の影響を受けにくいようなところにはマングローブが生育します。

河口デルタ地帯(三角州)
河川から土砂が流入して、三角州をつくっているような地域があります。写真は奄美大島の住用川と役勝川のデルタ地帯です。

河口域
河口や入り江などにもマングローブが生育します。上流からの土砂が特に泥質に近い場合は生育しやすいですが、全域で育つわけではなく、海側からの砂質の流入物が堆積しているところでは、活着率が低くなるために育ちにくいです。

河川中流域
急峻な地形では無理ですが、平坦で川の奥のほうまで海水が浸入するような場所では、中流域までマングローブが見られることがあります。


マングローブの語源

マングローブという名前はどこから来ているんだろう

マングローブの語源ですが、調べる本によっていろいろなことが書いてあるので、以下に語源について記されているものをいくつか紹介してみます。

1 マレー語の汽水域にはえるような植物「マンギ・マンギ」と小さい森「グローブ」が結びついたともいわれている。
2 ポルトガル語のマンゲ(マングローブ)と、英語のグローブ(小さな森、木立ち)の合成語だといわれる。
3 南米の原住民が古くから呼んでいた「マンガル」という言葉がヨーロッパに伝わり、アメリカに広まり、それに森を意味するグローブがついて、マングローブとなったといわれる。

中国では紅樹林という呼び名があり、沖縄関係の書物には、漂木(ヒルギ)という名前も出てくるそうです。
樹皮からとれる赤い染料が紅樹といわれていたそうです。
オヒルギは花の萼片(がくへん)が赤くなることからアカバナヒルギとも呼ばれています。私にとってはこのアカバナヒルギの見た目が紅樹というイメージっぽいです。
胎生種子は落下した後に流れて漂うので、漂木(ヒルギ)なんですね。ロマンチックな感じがします。



オヒルギ
別名アカバナヒルギです。



胎生種子
メヒルギの種が水に漂っています。浮いている間は根が出ません。本当に漂流していますね。



参考文献 
 マングローブ入門 中村武久 中須賀常雄
 沖縄のマングローブ研究 沖縄国際マングローブ協会
 海と生きる森マングローブ林 国際マングローブ生態系協会
 海の森・マングローブをまもる 向後元彦